「盗撮」に関するお役立ち情報
余罪がある盗撮の罪はどのような刑罰になるのか
1 盗撮の再犯率と繰り返しやすい原因
盗撮などの性犯罪は比較的再犯率が高いともいわれています。
盗撮が繰り返されやすい原因としては、以下のようなものが挙げられます。
⑴ 電子機器の発達と成功体験
いったん盗撮が成功すると「次もまたバレずにできるはず」と思い、犯行を繰り返してしまいます。
⑵ スリルを求める
盗撮した写真のみではなく、盗撮行為(捕まるか捕まらないか)によって得られるスリルを求め、何度も盗撮行為を行うこともあります。
⑶ ストレスの発散
日々の生活でストレスにさらされていると、ストレスのはけ口として、盗撮の成功やスリルを求める心理に拍車がかかることもあります。
初めての盗撮に成功してしまうと、「成功体験をさらに重ねたい」「もう1度あのスリルを味わいたい」という気持ちが出てきてしまいます。
そして、盗撮を繰り返してしまい、逮捕されるとカメラのデータにより過去の余罪も明らかになるというパターンが非常に多いです。
2 盗撮行為に抵触する法律
⑴ 迷惑防止条例
盗撮行為については、都道府県が制定している「迷惑防止条例」に記載があることが多いです。
ここでは東京都の例を挙げます。
【東京都迷惑防止条例 第5条1項】
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
(1)(略)
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
東京都迷惑防止条例では、以下の条件で罰則が異なります。
- ・カメラを向けたり設置したりした場合(撮影なし):6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
- ・実際に撮影した場合:1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
また、「常習か否か」によっても罰則が以下のように異なります。
当然ですが、常習のほうが罰則は重くなっています。
- ・常習でカメラを向けたり設置したりした場合(撮影なし):1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
- ・常習で実際に撮影した場合:2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
常習の場合の罰則が別に設定されていることからも、盗撮の常習性(再犯性)の高さがうかがえます。
東京都以外であっても、多くの都道府県は盗撮行為について迷惑防止条例で規制しています。
表現や対象、罰則などは都道府県によって異なりますので、自分の住んでいる都道府県の条例を確認してみてください。
⑵ 軽犯罪法
東京都は、2018年の条例改正で「公共の場」以外にも規制場所を広げましたが、都道府県によっては「公共の場」しか対象としていないところもあります。
その場合、「公共の場所ではないところでの盗撮」を取り締まる法律は「軽犯罪法」です。
【軽犯罪法 第1条】
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
(略)
23 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服を着けないでいるような場所をひそかにのぞき見た
軽犯罪法違反の罰則は「拘留または科料」となっています。
- ・拘留:1日以上30日未満の範囲で刑事施設に拘置されること(拘禁刑よりも短い)
- ・科料:1,000円以上10,000円未満のお金を納めること(罰金よりも安い)
⑶ 撮影罪
正当な理由がなく、人の性的な部位や人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)、わいせつな行為又は性交等をしている人の姿態について、ひそかに、対象性的姿態等を撮影する行為をした場合、撮影罪に該当するとして、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処される可能性があります。
⑷ 盗撮行為に附随して問われる可能性のある罪
盗撮行為そのものは「迷惑防止条例」や「軽犯罪法」「撮影罪」に問われますが、盗撮の様態によっては以下のような罪に問われる可能性もあります。
- ・住居侵入罪:他人の住居に侵入して盗撮をした場合
- ・建造物侵入罪:会社や学校など、住居ではない建物に侵入して盗撮をした場合
- ・児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法):18歳未満の性的な写真を撮影した場合
3 盗撮の余罪がある場合の罪
「逮捕された時の盗撮が初めて」というケースは実はあまり多くありません。
盗撮は、何度か繰り返しているうちに逮捕される、というパターンのほうがよく見られます。
例えば、逮捕されたのが3回目の盗撮の時だった場合、過去に2回、盗撮を行っていることになります。
では、この「過去2回分の盗撮」はどのように扱われるのでしょうか。
⑴ 盗撮の余罪が判明する場合
盗撮を行ったスマートフォンやカメラなどは、いったん押収されます。
そこに盗撮データが残っていると、簡単に余罪が判明します。
⑵ 余罪は立件されるのか
過去の盗撮については、「個別に立件されることはほとんどないが、状況によってはあり得る」といったところです。
盗撮された写真のみを手がかりにして、被害者や撮影場所を特定するのは非常に困難です。
例えば、スカートの中を撮影した写真のデータがあったとしても、どこで誰を撮影したのかが分からなければ、事件としては扱えません。
ただし、逆にいえば「日時と場所が明確に特定できる場合」は立件の可能性があるということです。
また、繰り返し行っている・計画的な盗撮・証拠隠滅(画像データの削除やその場でスマートフォンなどを破壊するなど)などの事実が明らかになると、立件されるかもしれません。
⑶ 盗撮を繰り返すことによる影響
過去の盗撮について、立件こそされないものの「常習である」とみなされた場合、迷惑防止条例違反において「常習」の罰則が適用され、刑罰が重くなる可能性があります。
また、刑法には「再犯加重(刑法第57条)」という項があり、「再犯の刑は、その罪について定めた拘禁刑の長期の二倍以下とする」と規定されています。
5年以内に同じ犯行を繰り返している場合、この再犯加重が適用される可能性も出てきます。
4 盗撮の余罪がある場合、被疑者がとるべき行動
逮捕された時点で「過去にも盗撮していた」という事実があるかどうかは、逮捕された本人が一番よく分かっているはずです。
余罪がある場合、取調べにおいてどこまで余罪について言及すべきなのでしょうか。
⑴ データの削除は行わない方がよい
逮捕直前にデータを消したり機器を破壊したりする被疑者もいますが、これは絶対にやめるべきです。
心証が非常に悪い上、データを消しても結局復元されることが多いので、削除する意味がありません。
⑵ 自白は一長一短
「過去にも別の場所で盗撮しました」と素直に自白することには、メリットもありデメリットもあります。
メリットは「心証が良くなるかもしれない」という点、デメリットは言うまでもなく「罪が重くなる可能性がある」という点です。
当初「立件するほどではない」と判断された盗撮画像について、被疑者本人が自白したことで日時や場所、被害者が特定されると、立件される可能性は高くなります。
盗撮で逮捕された被疑者には、取調べに対して、一切の話をしなくてもよい「黙秘権」が保障されていますから、余罪について質問を受けても返答をする義務はありません。
しかし、黙秘すれば追及もより厳しくなります。
余罪があり、黙秘するべきかどうか迷うときは、弁護士の面会を求めて相談した上で判断するべきです。
5 盗撮行為の刑事事件は弁護士へ依頼してアドバイスを受けよう
盗撮行為、特に余罪のある被疑者の刑事事件については、弁護士へ依頼することをおすすめします。
理由は以下のとおりです。
⑴ 弁護士ならいつでも面会可能
刑事事件では、家族でも被疑者と面会できない期間(逮捕後72時間)があります。
しかし、弁護士であれば、自由に被疑者と面会することができます。
逮捕後の本人の様子も分かりますし、例えば今回のように盗撮の余罪があるような場合、取調べ時の注意点などについて詳細にアドバイスすることができます。
⑵ 弁護士が入ると被害者との示談がスムーズに行く
盗撮の前科は付かないに越したことはありません。
盗撮で起訴されるということは、刑事裁判にかけられるということです。
日本の刑事裁判の有罪率は99%を超えるといわれていますから、起訴=有罪、と考えてほぼ間違いありません。
有罪となると「前科」がつきます。
前科がついてしまうと、今後の生活に支障が出ることもあります。
前科を付けないためには不起訴(刑事裁判にかけられないと判断されること)になることが必要なのですが、不起訴に持ち込むためには「被害者との示談」が非常に重要です。
盗撮などの性犯罪の場合、被疑者と被害者が直接交渉するというのは考えにくいため、誰かが間に入って交渉する必要があります。
そんなとき頼りになるのが弁護士です。
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